き》でいいわ。」
 するとある時倉持の座敷へ呼ばれ、料亭のお神が、主人を呼んで来いというので、寿々龍の銀子はお神を迎えに行き、お神が座敷へ現われたところで、三人のあいだに話が纏《まと》まり、倉持が銀子のペトロンと決まり、芸妓屋《げいしゃや》へ金を支払うと同時に、月々の小遣《こづかい》や時のものの費用を銀子が支給されることになり、彼女も息がつけた。

      四

 文化の低いこの町では、銀子の好きなイタリイやドイツの写真もなく、国活がまだ日活になったかならない時分のことで、ちゃんばらで売り出した目玉の松ちゃんも登場せず、女形の衣笠《きぬがさ》や四郎五郎なぞという俳優の現代物が、雨漏《あまも》りのした壁画のような画面を展開していたにすぎなかった。しかし歌劇とか現代劇とか、浪花節《なにわぶし》芝居とかいった旅芸人は、入れ替わり立ち替わり間断なくやって来て、小屋の空《あ》く時はほとんどなかった。東京から来るのもあり、仙台あたりから来るのもあり、尖端的《せんたんてき》な歌劇の一座ともなれば、前触れに太鼓や喇叭《らっぱ》を吹き立て、冬|籠《ごも》りの町を車で練り歩くのであった。
 銀子も所在
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