話で持ちきりというふうであった。
 銀子にも男性的なこの青年の印象は悪くなかった。文化人気分の多い栗栖とは違って、言葉数も少なく、お世辞もなかったが、どこかのんびりした地方の素封《ものもち》の坊っちゃんらしい気分が、気に入っていた。
 選挙騒ぎもやや鎮《しず》まった時分、倉持は二三人取巻きをつれて来たり、一人で飯を食いに来たりもしていたが、よって来ると三味線《しゃみせん》をひかせておばこ節など唄《うた》って騒ぐくらいで、手もかからず、気むずかしいところも見えなかった。
 銀子は来る時から、別にここで、根を卸す考えはなく、来た以上は真面目《まじめ》に働いて借金を切り、早く引き揚げましょうと思っていたので、千葉時代から見ると、気も引き締まっており、お座敷も殊勝に敏捷《びんしょう》にしていたので倉持にもそこいらの芸者から受ける印象とは一風ちがった純朴《じゅんぼく》なものがあった。
「どうして、この土地へ来たのかね。」
「どうしてでもないのよ。私は上州産だから、西の方は肌に合わないでしょう。東北の方ならいいと思ったまでだわ。来るまではI―なんて聞いたこともなかったわ。でも来てみると、暢気《のん
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