が兆《きざ》しはじめ、人馬も通えるように堅く張り詰めた河の氷もようやく溶けはじめたころで、町は選挙騒ぎでざわめき立っていた。銀子の行く座敷も、とかく選挙関係の人が多く、それも土地に根を張っていた政友会系の人が七分を占め、あと三分が憲政会という色分けで、出て間もない銀子はある時これも政友系の代議士|八代《やしろ》と、土地の富豪倉持との座敷へ呼ばれたのが因縁で、倉持のものとなってしまったのだった。
 倉持はまだ年が若く、学生時代はスポーツの選手であり、色の浅黒い筋骨の逞《たくま》しい大男であったが、東北では指折りの豪農の総領で、そのころはまだ未婚の青年であり、遊びの味は身に染《し》みてもいなかった。分家も方々に散らばっており、息のかかった人たちも多いので、その附近の地盤を堅めるのに、その勢力はぜひとも必要であり、投票を一手に集めるのにその信望は利用されなければならなかった。
 八代代議士と倉持との会談も、無論投票に関することで、倉持は原敬の依頼状まで受け取り、感激していた。
 新聞社の前には刻々に情報の入って来る投票の予想が掲示され、呼ばれつけている芸者たちまで選挙熱に浮かされ、どこもその
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