《かつお》を主にした漁業は盛んで、住みよい裕《ゆた》かな町ではあった。
 迎えに来ていたのが、銀子の女主人が働いていた本家のお神やその養女たちで、体の小造りな色白|下腫《しもぶく》れのそのお神も、赤坂で芸者になった人であり、姪《めい》を二人まで養女に迎えて商売に就《つ》かしており、来てみるとほかにも東京ものが幾人かあって、銀子もいくらか安心したのだった。芸妓屋《げいしゃや》が六七軒に、旅館以外の料亭《りょうてい》と四五軒の待合がお出先で、在方《ざいかた》の旦那衆《だんなしゅう》に土地の銀行家、病院の医員、商人、官庁筋の人たちが客であった。
「この土地では出たての芸者は新妓《しんこ》といってね、わりかた東京ッ児《こ》の持てる処《ところ》なんだよ。だけどあまり東京風を吹かさずに、三四カ月もおとなしく働いていれば、きっと誰か面倒見てくれる人が見つかるのよ。お前が自分で話をきめなくても、お出先と私とでいいようにするから、そのつもりで一生懸命おやんなさい。」
 出る先へ立って、お神は銀子の寿々龍《すずりゅう》にそんなことを言って聞かせたが、そういうものが一人現われたのは、この土地にも春らしい気分
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