に?」
「お父さんも承知の上なのよ。」
「愛ちゃんがいるからね。」
「いたっていいわよ。」
「それはね、私も商売人あがりだから、この商売はまんざら素人《しろうと》でもないんですよ。だから旦那《だんな》が御承知なら行ってもよござんすがね。でもそんなことしてもいいんですか。」
「どうしてです。」
「真実《ほんとう》か嘘《うそ》か、世間の噂《うわさ》だから当てにはならないけれど、お銀ちゃんとの噂が立っていますからね。」
「そんなこと嘘よ。全然嘘だわ。」銀子はあっさり否定した。
「そうお。そんなら私の方は願ったり叶《かな》ったりだけれど、旦那がよろしくやっているところへ、私がうっかり入って行ったら、変なものが出来あがってしまいますからね。」
「そんなことないわ。父さんにお神さんがないから、そんな噂も立つんでしょう。お師匠さんに来ていただければ、私も助かるわ。」
師匠も銀子の口車に乗り、やがて大弓場を処分して、藤本へ入って来たのだったが、入れてみると、ちぐはぐの親父と、銀子の所思《おもわく》どおりに行かず、師匠の立場も香《かんば》しいものではなかった。親父と銀子は、時々師匠の前でもやり合い、声
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