ゅ》に死なれ、姑《しゅうとめ》との折合いがわるくて、実家へ帰ったが、実家もすでに兄夫婦親子の世界で居辛《いづら》く、東京へ出て銀子の柳原の家に落ち着き、渋皮のむけた色白の、柄が悪くなかったので、下町の料亭《りょうてい》などに働き、女中|頭《がしら》も勤めて貯金も出来たところで、銀子の家と近所付き合いの小山へ縁づいたのであった。小山は日本橋のデパアト納めの子供服を専門に引き受けた。
「珍しいな。お前が出て来るなんて。どうだ変わったこともないか。」
父親はそう言ってお茶をいれ、茶箪笥《ちゃだんす》をあけて、小皿にあった飴《あめ》を出した。
「あの人たちも働いてるな。」
銀子は思った。芸者も辛いが、だらしない日々を送り、体に楽をしているのはすまないような気持だった。
「こないだ用があって、三里塚《さんりづか》へ行ってみたが、今年は寒かったせいか、桜がまだいくらかあったよ。今年は三里塚へお花見に行くなんて、時ちゃんたち言っていたけれど、あの雨だろう。」
「もう菖蒲《あやめ》だわ。」
銀子は家へ来てみて一層|侘《わび》しくなり、逝《ゆ》く春の淡い悩みに浸された。
「何か話でもあったかい。」
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