どく擦《こす》られたと見え、※[#「※」は「骨+「權」のつくり」、385−下3]骨《けんこつ》から頬《ほお》へかけて、肉が爛《ただ》れ血塗《ちまみ》れになっていた。銀子もその出来事は妹のたどたどしい手紙で知っていたが、親爺に話して見舞の金は送ったけれど、かえって懲りていいくらいに思っていた。
 銀子はわがままが利くようになったので、一つのことを拒みつづけながらも、時には不覚を取ることもあり、彼女の体も目立つほど大人《おとな》になって来た。
「お前のような教育のない者が、ああいう学者の奥さんになったところて、巧く行く道理がない。この商売の女は、とかく堅気を憧《あこ》がれるんだが、大抵は飽かれるか、つまらなくなって、元の古巣へ舞い戻って来るのが落ちだよ。悪いことは言わないから、家《うち》にじっとしていな。」
 そんなことも始終親爺にいわれ、それもそうかとも思うのだった。

      十一

 三月のある日、藤本の庭では、十畳の廊下外の廂《ひさし》の下の、井戸の処《ところ》にある豊後梅《ぶんごうめ》も、黄色く煤《すす》けて散り、離れの袖垣《そでがき》の臘梅《ろうばい》の黄色い絹糸をくくった
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