たりするのだったが、その理由は解《わか》らず、何となし兄さんのような感じがするのだった。昨夜も若い同僚たちに揶揄《からか》われ、酒を強いられ、わざとがぶがぶ呑んで逃げて来たのだった。
 栗栖は十畳の主人の帳場で、マダムの容態を説明し、入院の話をしていた。
「何しろお宅も忙しいから、とても手が届かないでしょう。つい自分で起《た》ったり何かするのがいけないんです。」
 親爺もそれに同意していたが、昨夜の銀子の話もしていた。
 この家《うち》には六人の抱えがあり、浜龍《はまりゅう》という看板借りの姐《ねえ》さんと銀子が、一番忙しい方だった。浜龍は東金《とうがね》の姉娘の養女で、東京の蠣殻町《かきがらちょう》育ちだったが、ちょっと下脹《しもぶく》れの瓜実顔《うりざねがお》で、上脊《うわぜい》もあり、きっそりした好い芸者だった。東金で仕込まれたが、柄がいいのでみすみす田舎《いなか》芸者にするのが惜しまれ、新橋の森川家へあずけて、みっちり仕込んでもらっただけに芸でも負《ひ》けは取らなかった。長唄《ながうた》のお浚《さら》いにかかると、一時に五六番から十番も弾《ひ》きつづけて倦《う》むことを知らなか
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