生臭い喧嘩《けんか》に連累し、そのころはもう岡っ引ではない刑事に追われ、日光を山越えして足尾に逃げ込み、養蚕の手伝いなどしていたこともあり、若い時は気が荒かったというので均平も少し気味悪がっていたけれど、苦労をさせたことを忘れないので銀子のことは銀子の好きなようにさせ、娘を操《あやつ》って自身の栄耀《えいよう》を図ろうなどの目論見《もくろみ》は少しもなかった。酒も呑まず賭事《かけごと》にも手を出さず、十二三歳の時から、馬で赤城《あかぎ》へ薪《たきぎ》を採りに行ったりして、馬を手懐《てなず》けつけていたので、馬に不思議な愛着があり、競馬馬も飼い、競馬場にも顔がきいていた。
均平はその後も、前科八犯という悪質の桂庵にかかり、銀子の後見として解決に乗り出し、千住《せんじゅ》辺へ出かけた時とか、または堀切《ほりきり》の菖蒲《しょうぶ》、亀井戸《かめいど》の藤《ふじ》などを見て、彼女が幼時を過ごしたという江東方面を、ぶらぶら歩いたついでに、彼女の家へ立ち寄ったこともあり、母親の人となりをもだんだん知るようになった。
汽車で清水隧道《しみずトンネル》を越え、山の深い越後《えちご》へ入って幾時間
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