れど、とかくお終いは芸者が背負《しょ》いこみがちのものよ。私も借金のあるうちは手足を縛られているようで、とてもいやなものだから、少し馬力をかけて、二千円ばかりの前借を、二年で綺麗《きれい》に切ってしまったの。荷が重くなった途端に、反撥心《はんぱつしん》が出たというのかしら。」
三
銀子が若かったころの自分の姿を振り返り、その時々の環境やら出来事やらの連絡を辿《たど》り、過去がだんだんはっきりした形で見えるようになったのは、ついこのごろのことで、目にみえぬ年波が一年一年若さを奪って行くことにも気づくのであった。
「今のうちだよ。四十になると若い燕《つばめ》か何かでなくちゃ、相手は見つからんからね。」
均平は銀子を憫《あわ》れみ、しばしば自分が独りになる時のことを考え、孤独に堪え得るかどうかを、自身に検討してみるのだったが、それは老年の僻《ひが》みに見えるだけで、彼女には新しい男性を考えることもすでに億劫《おっくう》になっていた。貞操を弄《もてあそ》ばれがちな、この社会の女に特有な男性への嫌悪《けんお》や反抗も彼女には強く、性格がしばしば男の子のように見えるのだった。
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