んだがね。僕も実はどうしようかと思っている。」
「田舎へ何しにいらしたんですの。」
「子供を継母の手から取り戻すためらしいんだ。」
 そして庸三はこの事件のデテールズについて、何かと話したあとで、
「貴女《あなた》はどうしてこんな商売を始めたんです。」
「私もいろいろ考えたんですの。クルベーさんも、もう少し辛抱してくれれば、もっとどうにかすると言ってくれるんですけれど、あの人も大きな山がはずれて、ちょっといけなくなったもんですから。」
 クルベーという独逸《ドイツ》の貴族は、新しい軍器などを取扱って盛大にやっていたものらしいが、支那の当路へ軍器を売り込もうとして、財産のほとんど全部を品物の購入や運動費に投じて、すっかりお膳立《ぜんだ》てが出来たところで、政府筋と支那との直接契約が成立してしまった。そこまで運ぶのに全力を尽した彼の計画が一時に水の泡《あわ》となってしまった。その電報を受け取った時、彼はフジヤ・ホテルで卒倒してしまった。
 しかし小夜子は今そんなことを初対面の彼に、打ち明けるほど不用意ではなかった。クルベーとの七年間の花々しい同棲《どうせい》生活については、彼女はその後折に
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