噂《うわさ》――花柳情痴の新聞種は尽きなかった。
 そこへお神が入って来た。お神というよりかマダムといいたい……。春見た時はどこからしゃめん臭いところがあったが、今見ると縞《しま》お召の単衣《ひとえ》を着て、髪もインテリ婦人のように後ろで束《つか》ねて、ずっと綺麗《きれい》であった。

      八

 お神の小夜子《さよこ》は、媚《なま》めかしげにちろちろ動く美しい目をしていて、それだけでもその辺にざらに転《ころ》がっている女と、ちょっと異った印象を与えるのであったが、彼女は一本のお銚子《ちょうし》に盃洗《はいせん》、通しものなぞの載っている食卓の隅《すみ》っこへ遠のいて、台拭巾《だいぶきん》でそこらを拭きながら、
「大変ですね、先生も葉子さんの問題で……。」
 庸三は二三杯|呑《の》んだ酒がもう顔へ出ていたが、
「僕も経験のないことで、君に少し聞いてもらいたいと思っているんだけれど。」
「賑《にぎ》やかでいいじゃありませんか。」彼女はじろりと庸三を見て、
「まあ一年は続きますね。」
 小夜子は見通しをつけるのであった。
「今お宅にいらっしゃいますの。」
「ちょっと田舎へ行っている
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