や石置場のようなものが雨に煙って、右手に見える無気味な大きな橋の袂《たもと》に、幾棟《いくむね》かの灰色の建築の一つから、灰色の煙が憂鬱《ゆううつ》に這《は》い靡《なび》いていた。
「ひどい雨ですことね。」
 渋皮のむけた二十二三の女中が、半分繰り出されてあった板戸を開けて、肱掛窓《ひじかけまど》の手摺《てすり》や何かを拭いていた。水のうえには舟の往来もあって、庸三は来てよかったと思った。
 女中は煙草盆《たばこぼん》や、お茶を運んでから、電話をかけていたが、商売屋なので、上がった以上、そうやってもいられなかった。
「お神さんじき帰りますわ。」
 女中が言いに来た。
「誰か話の面白い年増《としま》はいない。」
「いますわ。一人呼びましょうか。」
 やがて四十を少し出たくらいの、のっぽうの女が現われた。芸者という感じもしないのだったが、打ってつけだった。話も面白かった。お母さんの病気だと言って、旦那《だんな》を瞞《だま》して取った金で、京都で新派の俳優と遊んでいるところを、四条の橋で店の番頭に見つかって、旦那をしくじった若い芸者の話、公園の旧俳優と浮気して、根からぞっくり髪を切られた女の
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