仮装人物
徳田秋声

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)庸三《ようぞう》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一度|小樽市《おたるし》へ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「てへん+毟」、第4水準2−78−12、146−上−18]
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      一

 庸三《ようぞう》はその後、ふとしたことから踊り場なぞへ入ることになって、クリスマスの仮装舞踏会へも幾度か出たが、ある時のダンス・パアティの幹事から否応《いやおう》なしにサンタクロオスの仮面を被《かぶ》せられて当惑しながら、煙草《たばこ》を吸おうとして面《めん》から顎《あご》を少し出して、ふとマッチを摺《す》ると、その火が髯《ひげ》の綿毛に移って、めらめらと燃えあがったことがあった。その時も彼は、これからここに敲《たた》き出そうとする、心の皺《しわ》のなかの埃塗《ほこりまぶ》れの甘い夢や苦い汁《しる》の古滓《ふるかす》について、人知れずそのころの真面目《まじめ》くさい
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