》ったり、爪《つめ》を切ったり、細かい面倒を見てくれる若い葉子の軟《やわ》らかい手触りは、ただそれだけですっかり彼女を幸福にしたものだったが、それが瑠美子の母として彼女をおいて出て行ったとなると、それは何といっても酷《むご》い運命であった。
「咲子ちゃん、葉子さんの写真を枕《まくら》の下へ入れているんですのよ。」
 姉が庸三に話した。枕頭《ちんとう》へ行って見るとその通りであった。葉子は瑠美子の母で、もう今までのようにお前を愛していることはできないのだ――庸三はそれを言い聴《き》かすこともできなくて、ただ受動的に怺《こら》えているよりほかなかった。この子供と一緒に死ぬのも救いの一つの手だという気もした。
 そこへ葉子の手紙だった。そして幾枚もの色紙に書かれた手紙と一緒に、咲子への贈りものの綺麗《きれい》な色紙もどっさり入っていた。それを病床へ届けてから、彼は子供と二人で幾枚かの切手のべたべた貼《は》られた封筒の消印を透かして見た。
「スタムプは猿楽町《さるがくちょう》の局ですよ。」
「ふむ――じゃ神田だ。しかし神田も広いから。」
「ひょっとしたら、一色《いっしき》さんが知ってやしないか
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