もいくらかの世間的な虚栄や好奇な芝居気も出て来て、ちょっと引込みのつかないような形だった。
庸三は昨夜もよく眠れなかったし、このごろの体の疲れも癒《い》えてはいなかった。後になって葉子もたびたび逃げ出したし、庸三も逐《お》い出したりして、別れた後ではきっと、床を延べて寝ることにしていたが、近所のドクトルに来てもらうこともあった。起きていると何か行動しなければならない衝動に駆られがちなので、静かに臥《ね》そべって気分の落ち着くのを待つことにしたのであったが、その時はまだそういうことにも馴《な》れていなかった。後にしばしば彼の気持を支配して来た職業心理というものも混ざりこんではいなかった。ただ方嚮《ほうこう》のない生活意慾の、根柢《こんてい》からの動揺でしかなかった。
子供は父を劬《いた》わりながら、並んで歩いた。
「やっぱりここにいるんじゃないかな。」
例の旅館の前まで来かかった時、子供もその気がすると見えて、そう言うのだった。
「きいてみよう。」
庸三もその気になって、入口の閾《しきい》を跨《また》いで訊《き》いてみた。年増《としま》の女中が店に立っていて、
「梢さんですか、あ
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