ろ》に意の趣くままに暮らして来た彼女なので、手狭な庸三の家庭に低迷している険しい空気に堪えられるはずもなかった。けれど庸三は無思慮にもすっかり正面を切ってしまった。もともと世間からとやかく言われてややもするとフラッパの標本のようにゴシップ化されている彼女ではあったが、ふらつきがちな魂の憩《いこ》い場所を求めて、あっちこっち戸惑いしているような最近数年の動きには、田舎《いなか》から飛び出して来た文学少女としては、少し手の込んだ夢や熱があって、長年家庭に閉じこもって、人生もすでに黄昏《たそがれ》に近づいたかと思う庸三の感情が、一気に揺り動かされてしまった。何よりも彼女の若さ美しさが、充《み》たされないままに硬化しかけていた彼の魂を浮き揚がらせてしまった。涙を流して喰ってかかる子供の顔が醜く見えたり、飛びこんで来て面詰する、親しい青年の切迫した言葉が呪《のろ》わしいものに思われたりした。耳元にとどいて来る遠巻きのすべての非難の声が、かえって庸三に反撥心《はんぱつしん》を煽《あお》った。彼は恋愛のテクニックには全く無教育であった。若い時分にすらなかった心の撓《たわ》みにも事かいていた。臆病《お
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