くろ》の幹の側に立って、幼い時の思い出を語るのであった。幾つもの段々をおりると、そこに草の生《お》い茂った堤らしいものがあって、かなりな幅の川浪《かわなみ》が漫々と湛《たた》えていた。その果てに夕陽に照り映える日本海が蒼々《あおあお》と拡《ひろ》がっていた。啼《な》き声を立てて、無数の海猫《うみねこ》が浪のうえに凝《かた》まっていた。
その晩、庸三が風呂へ入って、食事をすましたところへ、もう二人の記者がやって来た。仕方なし通すことにした。
「福島の方から、ちょっとそんな通信が入ったものですから。」
文学的な情熱に燃えているような一人は、そう言って寛《くつろ》いだ。そして葉子を顧みて、
「ここにこんな風流な部屋があるんですか。」
そして葉子がビイルを注《つ》いだりしているうちに、だんだん気分が釈《ほぐ》れて、社会面記者らしい気分のないことも頷《うなず》けて来た。
「先生の今度お出《い》でになったのは、結婚式をお挙げになるためだという噂《うわさ》ですが、そうですか。」
庸三は狼狽《ろうばい》した。もっとも庸三にもしその意志があるなら横山の叔父《おじ》が話しに来るはずだと、葉子は言う
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