前にも一度|田舎《いなか》へ帰ったが、その時は見送りに行った庸三の娘を二人とも、不意に浚《さら》って行ってしまった。その日は土曜日だった。葉子に懐《なつ》いている幼い子が先きへ乗ったところで、長女がそれに引かれた。
「おばちゃんの家《うち》そんなでもない!」
 自然の変化の著しい雪国に育っただけに、とかく詩情の多い葉子に自慢して聞かされていたほどではなかったので、子供は失望したのであった。
 海岸線へ乗り替えてからは、多分花柳気分の多いと聞いている酒田へでも行くものらしく、芸人の一団と乗り合わせたので、いくらか気が安まった。事実葉子は昨夜寝台に納まるまで、警戒の目を見張っていた。異《かわ》ったコムビなので、二人は行く先き先きで発見された。葉子で庸三がわかり、庸三で葉子が感づけるわけだった。非難と嘲弄《ちょうろう》のゴシップや私語《ささやき》が、絶えず二人の神経を脅かしていた。――ここまで来る気はなかった。庸三の周囲も騒がしかった。
 芸人たちは、その世界にはやる俗俳の廻し読みなどをして陽気に騒いでいた。汽車は鈍《のろ》かった。
 葉子は初め酒田あたりの風俗や、雪の里と称《よ》ばれる彼女
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