それが糖尿病に原因していることが明らかになった。
「当分つづけてカルシウムの注射をやってごらんなさい。」
院長は言うのだった。
庸三は帰りにニイランデル氏液を買って来て、埃《ほこり》だらけになっているアルコオル・ラムプと試験管とを取り出して、縁先きで検尿をやってみた。彼は病気発見当時、毎日病院へ通うと同時に、食料を一々|秤《はかり》にかけていたものだが、その当時は日に幾度となく自身で検尿もやった。それがずっと打ち絶えていたのであったが、今|蒼《あお》い炎の熱に沸騰した試験管の液体が、みるみる茶褐色《ちゃかっしょく》に変わり、煤《すす》のように真黒になって行くのを見ると、ちょっと気落ちがした。
「ほらほら真黒だ。」
彼は笑った。
「その皮肉そうな目。」
葉子も笑っていた。
庸三が葉子の勧めで、北の海岸にある彼女の故郷の家を見舞ったころには、沿道の遠近《おちこち》に桐の花が匂っていた。葉子はハンドバックに日傘《ひがさ》という気軽さで、淡い褐色がかった飛絣《とびがすり》のお召を着ていたが、それがこのごろ小肥《こぶと》りのして来た肉体を一層|豊艶《ほうえん》に見せていた。葉子はその
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