た彼には、ぴんと来るような若い時代らしい感覚も閃《ひら》めいていた。
「御免なさいね、奥さんのこと批判したりなんかして。でも、御近所で奥さん評判いいのよ。美容院のマダム讃《ほ》めていたわ。」
 庸三は狐《きつね》に摘《つま》まれているような感じだったが、ちょうどそのころ、庸三は目に異状が現われて来て、道が凸凹《でこぼこ》してみえたり、光のなかにもやもやした波紋が浮いたりした。彼は年齢と肉体の隔りの多いこの恋愛に、初めから悲痛な恐怖を感じていたのだったが、ずっとうっちゃっておいた持病の糖尿病が今にわかに気にかかり出した。
「目が変だ。」
 彼は昨日東京駅へ行く時、ふとそれを感じたのだった。
「じゃすぐ診《み》てもらわなきゃ。これから帰りに行きましょう。」
 しかし馴《な》れて来ると、それはそう大して不自由を感ずるほどでもなかったが、今ふと池の畔を歩いていると、それがちょうどO――眼科医院の裏手になっているのに気がついた。診察時は過ぎようとしていたが、院長が気安く診てくれた。そして暗室へ入ったり、血液の試験をしたり、結核の有無を調べたりして、一時間以上もかかって厳密な試験をした結果、やはり
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