にいやな予感を与えたのは、清川の年上の愛人|雪枝《ゆきえ》の家《うち》で催された、年暮のお浚《さら》いの納会の時であった。庸三は葉子の身のうえに今にも何か新しい事件が起こりそうな感じで、下宿の閾《しきい》を跨《また》ぐのも何か億劫《おっくう》になっていたが、納会に誘われた時も弾《はず》まなかった。それもその前に、丸の内のあるビルディングの講堂で、高田夫妻の舞踊の公演のあった時も、帰る時にはぐらか[#「はぐらか」に傍点]されてしまって、気持を悪くしていたからで、せっかく熱心に誘われても、狐《きつね》につままれたようで、感じがよくなかった。しかし葉子の愛情に信用の置けようもないので、怒る張合いもなかった。
「そうね。僕が一々顔出すのもどうかね。」
「でも先生が行ってくれないと可笑《おか》しいわよ。お師匠さんも先生に見てもらいたがっているのよ。」
庸三もこの人の踊りをずっと前から見ていた。十二三年も前に、日本橋|倶楽部《クラブ》で初めてその人を見た時は、彼女も若かったが、踊りも瑞々《みずみず》していた。次第に彼女は新しい主題を取り扱い、自身の境地を拓《ひら》いて行った。庸三も踊りはわかるよ
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