ように遊戯に耽《ふ》ける時の、不健康さの無駄な繰り返しを思ってみるに限るのであった。
首相の放送を終りまで聞かずに、庸三はやがて明るい表通りへ出て来た。そしてそういう時には、独りで歩くのもまた楽しかった。
葉子の身のうえに、今までにもかつてなかった、おそらく今後にもあるまいと思われる恋愛事件の発生したのは、翌年の春のことだったが、それは環境と年齢と柄合いから見て、二人にとってきわめて自然の成行きであり、魔の翅《はね》のような予感は前から薄々影を落としていた。庸三はそれを希《ねが》わないだけに、わざとしばしば擬装的な示唆《しさ》を与えてみたのだった。
「あの男ならうまく行くに決まっている。」
しかし彼もまるきり否定しているわけでもなかった。どうせ離れて行くなら、つまらないものの掌《て》に落ちるよりも、行きばえのする相手に落ち着いた方がいいという考え方もないわけではなかった。利己的である一方、自分の息のかかったものを泥《どろ》に塗《まみ》れさせたくないという気持もあった。それは鬩《せめ》ぎ合うほど極端なものでもなかった。いずれも人間にありがちな感情だと言うよりほかなかった。
庸三
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