聞きたいと思っていたところなので、彼はステッキに半身を支えてしばらく耳を傾けながら、葉子の姿がもしも見えはしないかと、下宿の方に目を配っていた。先きの目当てのつかない彼女の下宿生活が、彼からの少しばかりの補助でいつまで持ちつづけられるはずのものでもなかったし、ジャアナリストに見放された葉子の立場を持ち直すこれという方法もなかったので、打開の道を講ずるために、何らか行動を執っているであろうことも考えられないことではなかった。それはそうなるべきだと思いながら、庸三の心には今なお割り切れないものがあった。しかしまた、なまじいに正体を突き止めたり何かするよりかも、今度はぼやかしておいた方がいいとも思って、なるだけ足を運ばないようにして来たのだったが、来てみるとやはり気になるのであった。と言っても彼も妄動《もうどう》のいけないことに、だんだん気がついていた。一度心が揺れはじめると、容易には揺れ止《や》まないので、そういう時は、部屋にじっとしているに限るのだった。そして光線を厭《いと》うように二人で下宿の部屋に閉じ籠《こ》もっている時の憂鬱さを考え、それがあたかも人生の究極絶対の法悦ででもあるかの
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