があり、均勢の取れた姿もスマートであった。
 葉子はちょっと衝立の端から半身を現わして、お辞儀したが、こっちはごたごた家庭的なので少し照れていた。
 するとそれから一週間もたったかと思うころに、帝劇の音楽会で、またしても葉子は小河内夫妻と出逢《であ》った。
 演奏は露西亜《ロシア》のピアニスト、ゴドウスキイであったが、いかにも露西亜人らしいがっちりした小肥《こぶと》りの紳士で、演奏技術の上手下手は、いくらか聞きなれたヴァイオリンほどにも解《わか》らないのだったが、好きな義太夫《ぎだゆう》の三味線《しゃみせん》などで、上手な弾《ひ》き手の軽々した撥《ばち》と糸とが縺《もつ》れ合って離れないように、長く喰《は》み出した白いカフスの手が、どこまで霊妙に鍵盤《けんばん》を馴《な》らしきっているかと思われた。
 葉子は最初から小河内夫婦の存在に気づいていた。それがちょうど二人の座席から二列前の椅子《いす》で、ちょうどこっちからその頸筋《くびすじ》と、耳と片頬《かたほお》と顎《あご》が斜《はす》かいに見えるような位置にあった。庸三は少し尖《とが》りのある後頭部から、強い意志の表象でもありそうな顎骨
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