がかかったが、それも春日の事務所にいる若い弁護士に委《まか》せてあった。
上海《シャンハイ》へ逃げて行った松川からは、あれ以来何の音沙汰《おとさた》もなかった。葉子より庸三の方が時々それを思い出し、元へかえるならいつでも還《かえ》れそうな松川に足場が出来たら、そこへ落ち着くのもよくはないかと思ったが、上海くんだりまで行くようなふてぶてしさも、葉子にはなかった。
ある時東京会館の二階で、上方風のすき焼を食べたが、庸三の子供三人に瑠美子もいた。彼らは衝立《ついたて》の陰で鍋《なべ》の肉を小皿に取りわけ、子供に食べさせていたのだったが、ちょうどその時、田舎《いなか》の人らしい毛皮づきの二重廻しを着た五十年輩の人と少し若い男と四人づれで、ゴルフやけでもしたような、色の浅黒い三十五六のシイクな濃い茶の背広服の男と、その夫人らしい派手な服装の女が入って来るのが、葉子の目についた。
「ちょっと、あれが小河内さん夫婦よ。」
葉子は庸三にささやいたが、ちょうど葉子の後ろにある衝立の斜向《はすむか》いの処《ところ》に、彼らは席を取った。別にそれほど目立つ男ではなかったが、鼻筋の通った痩せぎすな顔に品
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