うな彼女の鼻元思案のように思えたが、彼はにやにやしながら、ただ頷《うなず》いていた。
「今日はどうしてそんなに笑ってばかりいるの?」
葉子は神経質に詰《なじ》った。
「何でもないよ。何となくせいせいした気持なんだ。」
葉子の言うのでは、母も取る年だから、この上の苦労はさせたくない。家《うち》の収入も減ったので、かつての庸三のぺンを執ったあの離房《はなれ》も、人に貸すことになったし、この際少しお金をあげたいと思う。瑠美子の健康にも田舎の暮しのいいことがつくづく思われる云々《うんぬん》。
庸三がわざと擬装しているとでも思ったらしく、葉子は外へ出てからも、ここで別れる彼を哀れむように自身もいつか自身の言葉に感傷を誘われたふうで話しつづけた。
「じゃもうお別れね。解《わか》って下すったわね。」
彼女は手を延べた。
「さようなら。」
塵除けの翅《はね》を翻して、広小路の方へ歩いて行く彼の後ろに声がした。
しかし二日もたたないのに、庸三はまた呼出し電話の口で、彼女の朗らかな声を耳にした。
「すぐ来て。私お母さんと喧嘩《けんか》して帰って来たの。」
たといどんな条件で別れたにしても、
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