だったが、しかしちょうど家庭にはまるような、そんな女や結婚を考えるとやはり憂鬱であった。
 ある時も、庸三はその友人につれられて、麻布《あざぶ》の方に住んでいる、庸三などとはまるで生活規模の桁《けた》の異う婦人をおとずれてみた。婦人を見るというのは、附けたりの興味で、真実《ほんとう》は売りたがっているその家を見るのが目的だったが、建築はなるほどすばらしいものだった。もちろんある大財閥の血統の一人のこれは隠宅なので、構えが宏壮《こうそう》という種類のものではなく、隅々《すみずみ》まで数寄《すき》を凝らしたお茶趣味のものだったが、でっぷり肥った婦人の三年にわたった建築の苦心談を聴《き》くだけでも、容易なものではなかった。奥にある洋館が坪三千円かかったというのも、嘘《うそ》ではないらしかったが、そこの壁にかかっている大礼服装の老人は、万事不自由のないように婦人の身のまわりを処理しておいて、今はまた新しい女に移って行ったのだった。下草に高山植物ばかり集めた庭も寂《さ》びたものだった。
「何ならここでお書きになったら。」
 彼女はお愛相《あいそ》を言うのだったが、作家というもの、ことにこの資財家
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