ので、この人が中へ入る以上、てこずりぬいたこの問題も何とかきまりがつき、葉子の処置もつくのではないかと思った。それにいくら自分の弱点を掴《つか》まれても春日なら紳士だし、職業範囲外だからかまわないとも考えたのだった。
それにもかかわらず、葉子が離れて行ったとなると、庸三は何か心が落ち着かなかった。他の誰のところへ行ったよりも安心だとは思いながら、春日夫妻のところへ駈《か》けこんで行ったことを思うと、やっぱり心配であった。今度こそ有耶無耶《うやむや》では済まされず、何か動きの取れない条件がつくものだろうと思うと、今さら寂しかった。夫人がその背後にあって、鍵《かぎ》を握っているということも、想像されなくはなかった。そうでもしてこの際お互いを縛ることが最善の方法だとは承知していたが。――
間一日おいて、三日目の晩、果して春日がおとずれて来た。ちょうど遊びに来ていた小夜子の帰りがけで、彼女が門を出たとおもう時分に、春日が玄関へ入って来た。
二人はいつもの心易立《こころやすだ》てでも行かなかった。何か重苦しい雰囲気《ふんいき》のなかに向かい合っていたが、春日は切り出した。
「実は梢さんのこ
前へ
次へ
全436ページ中361ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング