とですが……。」
庸三の認識不足から、二人のあいだに大きな錯誤のあること、彼女自身の立場のますます苦しいことを、葉子が洗い浚《ざら》い一夜泣きながら訴えたことが、春日の容子《ようす》でも大体庸三に想像できた。
「どうです、先生もお困りでしょうから、ここいらで一つ綺麗《きれい》に清算なすっちゃ。それに梢さんちっとも先生を愛しちゃいないようですよ。」
春日は率直に言うのであったが、約束の金のことも出た。
「それも先生の口から出たことですって? 梢さんはどうしても貰《もら》いたいと言ってるんですが――。」
「いや、僕も実は後をいさぎよくしたいと思うから。」
「そうですね。」
一両日うちに金を都合するように約束して、じきに二人は別れたのだったが、するとその翌日の晩、庸三が小夜子の家の、いつものぴたぴた水音のする下の小間にいると、思いがけなく大衆作家の神山と春日とがやって来たというので、二階座敷へ行ってみた。庸三は話のついでに葉子の問題に触れて行った。そして少しこだわりをつけた。
「葉子にやる金のことですが、無論やるにはやりますが、何か新しい相手ができているんだったら、ちょっと困るな。それ
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