美子との次ぎの間の話し声を夢幻に聞きながらうとうと眠ってしまった。そして目がさめた時には、北山はもう浴衣をもって帰っていた。
「ちょうどあの人が外出しようとしているところだったんですて。芝の四国町《しこくまち》まで行くから、あの辺までお乗りなさいといわれて、北山さん一緒に乗って来たんですて。」
 そう言って葉子は包装紙にくるんで寄越《よこ》した浴衣を、そこへ拡《ひろ》げていたが、
「あの人|目容《めつき》がなかなか油断ならないって、北山さんがそう言っていますよ。」
 庸三もちらちら動きの多い小夜子の黒い瞳《ひとみ》が、どうかすると冷たい光を放って、その瞬間昔の妖婦《ようふ》を想像させるような美しさを見せることは知っていたが、それも、葉子などとはちがって、長いあいだのそうした職業から鍛えられた、どこか蕊《しん》に鋼鉄のような堅固なところをもっているからのことで、不良少女団長時代の可憐《かれん》な性情は今でも残っていた。
「梢さんしっかりしなくちゃ駄目よなんて、今菊野さんに言われたわ。」
 そう言う葉子の言葉のうちには、明らかに小夜子への敵対観念が含まれていたが、それも小夜子を恋敵《こいが
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