しの愚かな大名の美しい思いものが、柳眉《りゅうび》を逆立て、わがままを言い募る時の険しい美しさで。庸三はこれには手向かうことができなかった。
彼はデパアトから届いたその浴衣の一反を娘に、一反を小夜子に与えた。娘も小夜子もすでに仕立てて着ていた。庸三はその通り話した。娘に着せるのは当然だが、あの水ぎわの女などにやる法はないと言うので、葉子はヒステリイのように怒った。
「だって仕方がない。君とは別れていたのだから。」
「それにしても私が気持悪くおもうくらいのことは、考えてくれたってよかったじゃないの。あんな女にもったいないわよ。」
「じゃ一反買えばいい。」
「買ったのは欲しくはないわ。あれを取り戻してよ。」
「今でなくてもいいじゃないか。」
庸三は呟《つぶや》きながらも、仕方なし二三行書いたが、葉子は一応文句に目を通すと、やっと安心したように、封筒の表書のできるのを待って、画家の北山菊野に円タク賃をもたせて、小夜子のところへ使いにやった。
外は日盛りだったが、部屋のなかは涼しかった。庸三は床の黒柿《くろがき》の框《かまち》を枕《まくら》にしてしばらく頭を休めていたが、するうち葉子と瑠
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