し当たりそれを考える必要もなかった。
やがて晩飯がはじまった。そしてそれがすむと、瑠美子の童謡舞踊なんかに笑い興じて、しばらく雑談に花が咲いた。新聞の小説の噂《うわさ》、文壇のゴシップ、円本の売れ高、等々。
「そのうち一度二日会のピクニックおやりになりません?」
「ああ、そうね。」
「玉川あたりどうですの。網船を※[#「※」は「にんべん+就」、第3水準1−14−40、284−下−17]《やと》って一日楽しく遊びましょう。私もしばらく皆さんにお目にかからないわ。ぜひやりましょう。私通知出すわ。」
いつもの彼の姑息《こそく》で、そうしているうちに幾日かの日がたってから、ある時葉子が思い出したように庸三を詰問した。
「いつか先生のところに、まつ屋の浴衣《ゆかた》があったでしょう。あれどうなすって? 私一反ほしいわ。」
その浴衣地というのは、そのころ誰かの思いつきでデパアトとタイアップで工夫されたもので、作家たちの意匠に成るものであった。庸三も自作の俳句を図案にという註文《ちゅうもん》で、それを葉子が工夫したのであった。
詰問する葉子の顔は、たちまち険悪の形相をおびて来た。ちょうど昔
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