―そういった新らしい芸術運動の二つの異《ちが》った潮流が、澎湃《ほうはい》として文壇に漲《みなぎ》って来たなかに、庸三は満身に創痍《そうい》を受けながら、何かひそかにむずむずするようなものを感じていた。今まで受け容《い》れにくかった外国の作品などが、この年になっていくらか気持に融《と》けこんで来るようなものもあれば、貧弱な自分一人のカで創作することの愚かしさに、思い到《いた》らないわけに行かなかった。時とすると生涯の黄昏《たそがれ》がすでに迫って来て、このまま自滅するのではないかと思われもしたが、今においていくらかの取返しをつけるのに、まだ全く絶望というほどへたばってしまってはならないのだと思うこともあった。彼は若い時分とはまた違った興味と理解とで、それらの作品に対していた。
 するとある日の午後、西日の這《は》い寄る机の前にすわっている彼の目の前に、久しく見なかった葉子の瀟洒《しょうしゃ》な洋装姿がいきなり現われた。襟《えり》のところに涼しげな白いレイスのついた愛らしい服装が、彼女の体をいくらか小《ち》いさく見せていたが、窶《やつ》れも顔に見えていた。
「先生。」
 いくらか臆《おく
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