ばらく葉子と離れて暮らしていた。社会面記事から惹《ひ》き起こされた二人の醜悪な心情から、その後もいろいろ傍系的な不快な事件がおこって、ある時などは二人立ちあがって、部屋中押しつ押されつして争ったこともあった。どんな場合にも彼は腕力は嫌《きら》いであったし、剛情とか片意地とかいった、相手を苛立《いらだ》たせるような、女性にありがちな気質上の欠点をもたない葉子のことなので、油紙に火がついたように捲《まく》し立てるとか、あまりにも人を侮辱したような行動に出《い》でない限り立ちあがって争うなぞということは、自発的にはできるはずもなかったが、揉《も》みくしゃにでもしてしまわなければ鬱憤《うっぷん》が晴れないように、ヒステリックに喰《く》ってかかられる場合には、その二つの腕を抑えて、じりじり壁に押しつけるくらいのことは仕方がなかったし、膝相撲《ひざずもう》でも取るように、組んず釈《ほぐ》れつして畳のうえをにじり這うこともやむをえなかった。
それはある時彼女のたっての要請に応じて、一つの誓文を書かされた時であった。と言っても恋の起請《きしょう》誓紙といったような色っぽいものではなくて、今後一切彼女
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