《ま》きつけてしまった。
「わたし先生を殺すかもしれないことよ。殺しても飽き足りないくらいよ。」
葉子はぎゅうぎゅう紐を締めた。
庸三は笑っているような泣いているような、目も口も引き釣った葉子の顔を下からじっと見詰めながら笑っていた。
「ああいいよ、殺したって。」
葉子は馬乗りになって、紐を少し緩《ゆる》めたり、強く締めたりしていたが、終いに庸三も呼吸が苦しくなって来たので、痛そうに顔を顰《しか》めて紐へ手をかけた。
紐をゆるめて跳《は》ね返るまでには、半分は本気で半分は笑談《じょうだん》のような無言の争闘がしばらく続いたが、起きあがってみると、ぐったりとした吭笛《のどぶえ》のところは、手でさわったり唾《つば》を呑《の》みこんだりするたびに、腫物《はれもの》のような軽い痛みを感じた。
葉子の目に、そこに憎みきれない狡獪《わるごす》い老人が、いくらか照れかくしに咽喉《のど》を撫《な》ぜ撫ぜ坐っていた。
二十一
じりじり暑い西日が、庭木の隙《すき》や葦簾《よしず》を洩れて、西だけしかあいていない陰鬱《いんうつ》な彼の書斎の畳に這《は》い拡がるなかにいて、庸三はし
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