いうことから、あの人たちにはすでにそういった、有る処《ところ》から取ってやるのが当然だという、生活の必要から割り出された太《ふ》て腐れの感情があるのだと、葉子は話して、
「草葉さんはいつ約束の金をくれるんだと言って、よく催促したものよ。私が母からもらって持って行ったお金もみんな使ってしまって。」
 しかしこのマルクス・ボオイもブルジョアの一人|息子《むすこ》だけに、葉子が想像したほど、内容にぶつかって行くのは容易でなかった。そうするのはやはり普通の世間の令嬢のような、舅姑《しゅうとしゅうとめ》にも柔順で、生活も質素な幾年かを、じっと辛抱しなければならないのであった。恋愛だけを切り放して考えることもできなかった。

 ある日の午後、庸三と葉子はまだ秋草には少し早い百花園を逍遙《しょうよう》していたが、楽焼《らくや》きに二人で句や歌を書きなどしてから、すぐ近くの鳥金へ飯を食べに寄ってみた。そこは古くからある有名な家《うち》で、どこにいても誰とも顔の合うことのないように、廊下や小庭で仕切られた芝居の大道具のような古風な幾つかの部屋をもった落着きのいい家であった。
 いつかも月の好い秋の晩に、
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