うな目が、長い睫毛《まつげ》の陰に大きく潤い輝いていた。
 庸三も「現在の貴方の心境は」なぞと訊《き》かれて当惑した。
「こういうことになると、誰しも未練の残るのは当然でしょう。結婚が円満に運ぶようにというのは嘘じゃないですかね。やっぱり梢さんは貴方が持って行かれた方がいいのじゃないですか。」
 主任は突っ込んだ。
「いや、この結婚は順調に運ぶようにというのが私の本心なのです。清算するつもりだからこそ批判もしたので。」
 庸三はこの恋愛のわずかにはかない虚栄にすぎないことも知っていたが、それも惨《みじ》めな未練の変装だかも知れなかった。
 電話のかかって来たとき、庸三はちょうど部屋にいて、今日あたり何か言って来そうな気がしていた。で、下宿の電話室へ行ってみるとやっぱり葉子の声だった。
「先生、私よ。今新橋にいるんですけれど、これからモナミへいらっしゃれない!」
 その声はやはり耳に楽しかった。
「そう、行ってもいい。」
「じゃすぐね。きっとよ。」
 葉子はおきまりを言って電話を切った。
 庸三は部屋へ還《かえ》って支度《したく》をしたが、しかし何となく億劫《おっくう》でもあった。火に生
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