逗子の海岸にもいつしか秋風が吹いていた。
そのころになって、庸三はまたしても葉子の家に寝食することになった。
「当分またしばらく行っていてやらなけりゃならないからね、留守をよく気をつけて。」
庸三は家《うち》を出るとき、そう言って長男に後事を托《たく》した。訂正の記事は出したにしても、それは苦しまぎれの糊塗的《ことてき》なもので、葉子は社会的には全く打ちのめされた形だった。
訂正記事は、新聞社の会議室で作られ、黒須もりゅうとした羽織|袴《はかま》に黒足袋《くろたび》という打扮《いでたち》で、そう言えばどこか院外団の親分らしい風姿で立ち会ったが、庸三にしてみれば、前の記事を塗りつぶすのは、そうたやすいことでもなかったし、葉子側に立っている黒須も来ている時に、記者に談話を取られるのは、あまり見よい図ではなかった。もちろん前もって葉子からその話はあった。彼女は庸三に屈辱感を抱《いだ》かせないために、細心の注意を払うことを忘れなかった。
約束の時間に、庸三が行った時には、葉子はまだ来ていなかったが、主任の木元氏としばらく話しているうちにやって来た。黒須もにこにこしながら入って来たが、庸
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