》の縁《へり》に内から錠がかかるような仕掛になっていたが、部屋は物堅い感じの野暮くさいもので、何の風情《ふぜい》もなかった。
 残暑はまだ哀えなかった。煽風器《せんぷうき》はもう片寄せられて、床の籠《かご》花生けに秋草が插《さ》されてあったが、庸三は心も体も疲れていた。鏡を離れた葉子はしろしろした頬《ほお》に淡紅《うすあか》い紅を差して、昨夜の泣き濡《ぬ》れた顔とは、まるで見違えるようになっていたが、額に悲痛な曇りを帯びていた。
 やがてトオストに二皿ばかりの軽い食事を取った。
「これから新聞社へ行ってね。」
「そうね。行ったところで恥の上塗りをするようなことになるんじゃないかと思うけれど。それに取り消しを出すったってほんの形式だけだから。」
「じゃ私はどうすればいいんでしょう。先生の気持はよく解《わか》るけれど、ジャアナリストの手に乗るということがありますかよ。あの人たちだって、まさか先生のしゃべりもしないことを書き立てはしないですもの。このままじゃ、私の運命は滅茶々々《めちゃめちゃ》だわ。先生のおしゃべり一つで、私が世の中から葬られるなんて惨《みじ》めじゃないの。」
「しかし結婚は
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