も繰りかえしてそれを言ったんだが、後で少しばかりの君の批評はしたんだ。しかしあれも今まで新聞に書かれた以上に悪いとも思えないな。」
「世間は何と言ってもいいのよ。先生の口から出たということが重大なのよ。」
「しかしそれが不当な悪口だったら、非難されるのは僕じゃないか。」
「先生は大家よ。私なんかと一つには言えないじゃありませんか。こんな時こそ、私を庇護《かば》ってくれなきゃいけない人なのに、先生は私を突き落とすようなことをしたのよ。先生の言葉一つで、私の運命は狂わせることもできるのよ。」
「僕の言ったことに、そんなに悪意があるとは思わないな。」
 そこへ洋食と酒が持ちこまれて来た。
「御免なさいね。こんな話よしましょうね。」
女中は煙草《たばこ》の灰の散った食卓に台拭巾《だいぶきん》をかけて、そこへ通しものと猪口《ちょく》と箸《はし》とを並べた。
 初めから解りきったことだったが、葉子にまくし立てられては、防ぎの手はなかった。しかし今夜の彼女は、捲《まく》し立てるには痛手を負いすぎていた。それに今の場合、葉子にとってもっとも大切なことは善後策であった。そしてそれには庸三をして庸三の過《
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