だ。」
「葉子さんに気の毒ですよ。それに毒の花なんて出ているけれど、これはボオドレイルのあれだけれど、意味が全然違いますよ。」
そのころ庸太郎はその詩人の悪魔主義にも影響されていた。行動にもそれが窺《うかが》われた。
しかし庸三は綺麗事《きれいごと》で済まされないことも感じていたので、目を瞑《つぶ》るよりほかなかった。
小夜子は興味がなさそうに、やがて仏壇を離れて来ても、その問題には触れようともしなかった。ずっと後に気のついたことだが、小夜子はそのころすでに彼の子供の友達であった。
二三日してから、ある晩もまた庸三は小夜子の家《うち》で遊んでいた。
彼はそこで落ち会ったジャアナリストの一人と、川風に吹かれながらバルコニイへ出て、両国から清洲橋《きよすばし》あたりの夜景を眺めていたが、にわかに廊下へ呼びこまれた。
「先生お電話ですよ、葉子さんですよ。」
このごろここへ来て手伝っている、小夜子の姪《めい》が低声《こごえ》で言うのであった。
「居ると言った?」
「え、坊っちゃんが……。」
庸太郎が帳場にいたのだった。
「そいつあ困ったな。」
当惑しながら庸三は降りて行った。
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