かねがね分かっていた。彼はその男の風貌《ふうぼう》や人柄を想像してみて、通俗小説にでもありそうな一つの色っぽい出来事と場面を描いてみたりしていた。
「それでここへ着いてから、私電話で黒須さんと話してみたのよ。そしてこの私たちの問題を、はっきり取り決めるために、一度先生に逢《あ》ってもらいたいと言ったの。――御免なさい、お断わりしないで、先生を引っ張り出したり何かして。でもそうするよりほかなかったの。お願いですから、黒須さんにお逢いになってね。」
そういうことには、至ってあやふやの庸三ではあったが、娘の縁談を取りきめるというほどのことでもなかったし、一応先方の話を聴くくらいのことなら引き受けてもいいのではないかと思った。
「逢ってみてもいいね。こっちから行くのか、それともどこか会見の場所でも決めてあるんだったら……。」
「あの人がここへ来ることになっているのよ。それも明日のお昼ごろということにしたの。あの人、ほんとうに先生と手が切れているかどうか、それも心配らしいんだわ。なおさら先生に逢っていただく必要があるわけなのよ。」
「つまり君がその男に見込まれたというわけなんだね。」
「それも
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