いので、庸三はほんの少しばかり食べものを通したきりであった。葉子はそわそわ落ち着かなかった。
「権藤さんいやな人! 何か私たちの生活を内偵《ないてい》しにでも来たように、それは横柄な態度なのよ。」
庸三は狡《ずる》そうにただ笑っていた。
「私たちのことは、当分新聞社へ何もお話しにならないようにね。」
「それは僕もそのつもりで……。」
「あの兄さんと言っても、従兄《いとこ》ですけれど――黒須《くろす》という人がいるのよ。もと外務省畑の人で、今は政党関係の人らしいわ。乾分《こぶん》も多勢《おおぜい》あるらしいの。でも立派な紳士よ。その人が園田家のことは、何でも相談に乗っているという関係から、今度のこともその人が引き受けてくれているの。いずれ時機を見てお父さんにも承諾させるが、差し当たり牛込《うしごめ》にある家が売れると、そのうちの一万か二万かの金をそっと融通するから、当分それで家庭をもつようにしようと、そう言ってくれるのよ。その人、奥さんと鵠沼《くげぬま》にいますけれど、ちょっといい暮しよ。奥さんも教養のある人よ。」
庸三の耳には、あまり愉快にも響かなかったが、葉子がそうした落着き場所
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