飯を食べに行ったこともあった。マダムは落着きのいい手広い洋館に住んでいて、洋酒の用意などもあった。幾年前かに結婚生活を清算して、仏蘭西《フランス》で洋裁の技術などを仕込んで来た。
がっちりした、燻《いぶ》しのかかった家具の据《す》えつけられた客室で、メロンや紅茶の御馳走《ごちそう》になりながら、しばらく遊んでから、夕方になって三人で銀座へ出てみたが、生活内容を探り合うこともできないほど、何か互いに折合いのつかない気分であった。
翌日、庸三は庸太郎と権藤青年とを相手に、逗子の噂《うわさ》をしていた。
「さあどうしたかね。」
「行ってみましょうか。」
権藤青年は言い出した。
「さっそく金に困ってるんじゃないかと思うがね。相手はブルジョウアの一人|子息《むすこ》だけれど、何しろ学生のことだからね。」
「どんな様子か、僕行ってみましょうか。」
「そうね、もし金が入用なら、少しぐらいやってもいいんだが……。」
庸三は今少し迹《あと》をつけてみたいような気もした。
逗子へ行った権藤が帰って来たのは、その夜の八時ごろであった。庸三はちょうど寝転《ねころ》んでストリンドベルグの戯曲を読み耽《
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