ある婦人の着る、贅沢《ぜいたく》な支那服ももっていたし、クルベーの持ちものとして、ホテルの夜会で踊ったこともあるので、ドレスや不断着ももっていたけれど、もう型が古くなっていた。
「さあね、洋服は止《よ》した方がいいんじゃないかね。支那服ならいいがね。」
「異《ちが》った意味で、あの人もそう言ったのよ。日本の女が何も身についた和服を棄《す》てて、洋服を着る必要ないって。でも着てみたいのよ。」
小夜子は多くの文壇人や画家や記者を知るようになってから、今まで附き合っていた株屋とか、問屋《とんや》の旦那《だんな》とかいった種類の男が、俗っぽいものに見え、花柳趣味の愛好者である彼らを飽き足りなく思っていた。出入りの芸者は仕方がないとしても、型にはまった一般の待合の女将《おかみ》や女中などとも反《そ》りが合わなかった。彼らの目から見れば、小夜子は毛色のかわった異端者であった。
ひつじ屋で、花模様のジョウゼットを買ってから、四谷《よつや》に洋装学校をもっているあるマダムの邸宅を訪問した。庸三はこのマダムを、ある婦人雑誌社の手芸品展覧会で知ってから、一度その家を訪問して、それから一緒に小夜子の家へ
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