っとそこをぬけてホテルへ引き揚げた。そして庸太郎たちを促して、朝の食事も取らずにそこを立ってしまった。

 庸三はにわかに火が消えたような寂しさを感じた。書斎に独りいる時もそうだったが、小夜子の家で遊んでいる時にも、何か気持の空隙《くうげき》を感じないわけには行かなかった。小夜子同伴で銀座へ出たり、足休みにバアやカフエへ入ったりして、動けば動くほど心の落着きが失われるのだった。心の動揺を抑制する手近な方法は、下凡な彼としては、まずふらつきやすい体を抑制することにあることを、彼はだんだん学んで来たので、厳《きび》しい宗教的な戒律というほどでなくとも、日常生活を何かそういった形式に篏《は》めこめるものなら、そうしたいという気持もありながら、ちょうど少し勤労以外の所得があったところから、二十五年封じこめられていた、貧困な結婚生活の償いをでも取ろうとするかのように、気持は吝々《けちけち》しながら計算はルウズになりがちであった。ぽっと出の女中の手に成った、どうにも我慢のならない晩飯も一つの原因であったが、時のジャアナリズムから見棄《みす》てられた侘《わび》しさも、とかく彼を書斎に落ち着かせようと
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