ルミを引き受けるだけの自信が、果して君にあるかどうか、この場で十分我々を納得させるだけの返辞を聴かしてくれたまえ――。とそう言われると青年はにわかに怯《ひる》んで、すみませんと言ったきり、首を俛《た》れてしまった。そしてその瞬間、男性的なマスタアへのハルミの信頼が強められた。
「何の話かと思ったらそんなことか。」
庸三は擽《くすぐ》ったい感じだった。
「夜があけたらあの人をここへ呼びますから、先生から聴いていただきたいと思うんですけれど……。」
「そんな芝居じみたことは僕にはできない。」
庸三は答えた。それが苦し紛れの葉子の口実なのか、それとも相手の態度がはっきりしないので、今夜来たのを幸いに、庸三に立ち会ってもらいたいのが本心か、そのいずれだかは彼にも解《わか》らなかった。いずれにしても、青年の家柄、父親の社会的地位などから考えて、とかく誠意を欠いた葉子との結婚が、すらすら運ぶものとは思えなかったし、運んだところで長続きがするか否かも疑問であった。葉子も自身の弱点は相当計算に入れているはずでもあった。
「いけません?」
「僕はそんな厭味《いやみ》なことは嫌《きら》いだ。」
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