形で意識されていたに違いないのだし、撞球場での初めての印象を想像してみても運命のプログラムには、疾《と》くに何らかの発作的な事件が用意されてあるようにも思えた。
 しかしそれはそれとして、彼は今そのことをすっかり忘れたように、憂鬱で険悪な逗子の家からもしばらく離れていた。
「家へいらっしゃいよ。お花でもして遊びましょうよ。」
 小夜子は言っていたが、そこへ門の開く音がして、昨日また逗子へ遊びに出かけて行った庸太郎がひょっこり帰って来た。彼は自分のことのように少し悄《しょ》げた顔をしていた。
「どうしたんだい。」
 庸三は不安そうに訊《き》いた。
「ちょっとお父さんの耳に入れておかなきゃならないことが起こったので……。」
「逗子で?」
「ええ。」
 庸太郎の話では、今日も園田と葉子と彼と三人で遊んだのだったが、園田に仕かける葉子の悪戯《いたずら》が、すでに二人の接触が危険に陥っていることを語るに十分だというのであった。葉子はいつもの口笛を吹きながら、青年と手をつないで歩いたり、ステッキの柄を彼の衿《えり》に引っかけて後ろから引っ張ってみたりなどなど。
「僕は二人に送られて、汽車に乗り込ん
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