来たというので、子供の同窓に対する父の礼儀として、サルンの方へ出て見た。庸太郎はちょうど風呂《ふろ》に入っていた。葉子は紹介者の庸太郎も乗り超《こ》えて、すでにその青年と心持の接触を感じていたらしい折なので、風呂へ入っている庸太郎の方へも何か愛嬌《あいきょう》を振りまいていた。
「お風呂のお加減いかが。」
などと湯殿の方へ声かけたりしていた。
含羞《はにか》んだふうで硬《かた》くなっている青年園田を見たとき、その俊秀な風貌と、すくすくした新樹のような若さに打たれながら、庸三の六感に何か仄《ほの》かな予感の影の差して来るのを感じはしたが、それはむしろ客観的な美しい幻影のようなもので、もし卑しい嫉妬《しっと》という感情がいくらかあったとしても、それは理性の力で十分抑制しうる程度のものであった。この年下の純白な若ものを※[#「※」は「さんずい+賣」、第3水準1−87−29、255−下−11]《けが》すようなことは、さすがに葉子も差し控えなければならないことだし、何も事件の起こる気遣《きづか》いはなさそうにも思えたが、この海岸へ来る時、すでにこの青年の存在が、彼女の頭脳《あたま》に何らかの
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